タスカンプロジェクト

ベン・ラング、プロジェクトマネージャー

 完成したタスカンは3回目の進化を果たした車です。最初はコンバーチブルになる予定でしたが、ピーター・ウィーラーがもっとサーブラウベースにしたいと決めました。サーブラウは超高性能TVRの第2世代に当たる物であり、社長はオリジナルよりももっと大きくて強い物とすることを決めました。

 とりかかってすぐに、前部のピラーに保護用の鋼鉄の構造物を内蔵させることがほとんど不可能であることがわかり、また、リアにロールケージを付けた状態でスタイリングを維持することも大変困難であることがわかりました。コンバーチブルを両方のモードで格好良くするのはとても難しいのです。そこで、グリフィスを大きくするのではなく、サーブラウを小さくすることに決め、前後両方に保護フープを追加できるタルガトップに決めました。

 タスカンでは、TVRで初めて3Dコンピュータモデルを使いました。視覚化するのに役立ちました。物を作って見なくても、コンポーネントを動かす効果を評価することが出来ます。

 軽量化というのは新しい哲学で、それは全ての物を見なくてはならないことを意味しました。例えばライトです。最初はバス用にデザインされたライトユニットを使おうとしました。そこに、Hella社が重量が三分の一の小さな魚の目のユニットを思いついたのです。スタイリストはそれらから特徴を作ったのです。スタイリングは重量を削減することを追求しました。

新しいペダルボックスを作って床置きし、バルクヘッドからぶら下げるのを止めました。そのようにするのは最近のTVR車では初めてで、上で支持しなくて良いので電気物のためのスペースが出来ました。この部分を見て、軽量であることと同様に格好良くすることをを決めました。ペダルは単一のアルミ押し出し材から作られており、アルミのスピンドルにメンテナンスフリーのポリマーベアリングがついています。ボディではなくシャシーに取り付けられているので、重量を低く下げることが出来、全体として正確なフィーリングをもたらしています。私たちが追い求めていた物の一つが運転に対する良いフィーリングであり、触れる物、コントロールする物の全てがそれに貢献します。忘れてはならないのは、見た目も良くてはなりません。

 ここで働くことについて良いことの一つは、違った物を試してみて使えるなら、それを生産に入れるということです。我々の会社が小さいから出来ることです。大手メーカーだったら、費用が多くかかってしまうのでそうはいかないでしょう。

 車を軽く作るには全ての物を見なくてはなりません。ドアロックについては、クリス・ランシマンに話してもらいましょう。例えば、これまで使っていた銅製のラジエータは7kgでしたが、5kgのアルミ製ラジエータを見つけました。ボンネットは開きませんから、自重を支える必要がないので軽く作ってボルト止めしました。そうするように決めたら、スタイリストはエンジンを取り囲むようにもっと曲線的にし、エアインテークの造作と、レベルチェックのために開ける小さなボンネットを作り上げました。ディーラー用ボンネットとオーナー用ボンネットです。

伝統的に、TVRはチョップド・ストランド・マット-言い換えれば伝統的なグラスファイバー-を使っていました。タスカンには、ハニカムのようなコアマットが挟まれた織物を使いました。例えるなら、チップボードとベニヤ板の違いです。以前の物は硬くて強いのですが、フレキシブルではありません。新しい物は同等の強さであれば薄くて軽く、壊れずにフレキシブルなのです。私たちにとっては、製造するのが大変で複雑なのです。何故なら、織物は丁度良いサイズに正確に切断しなければなりませんが、チョップドマットではそうする必要は無かったのです。何かを軽くしようと思ったら、そうするための新しい方法を見つけなくてはなりません。古いテクノロジーは重いのです。

 タスカンのエンジンは直6のサーブラウよりもシャシーのかなり後ろの方にありますが、必要があれば、車を持ち上げて下側から降ろすのでなく、ボンネットから取り出すことが出来ます。これはサーブラウでは出来なかった、エンジンに補機を全部取り付けて完全なユニットにした状態で車に積み込むことが出来るということです。これは生産ラインの大きな時間短縮になります。

 配線のプラグとソケットは車の電機系を組み立てやすく、また信頼性を高めますし、バルクヘッドに密閉されているので水漏れを防止します。シートベルトは後方の隔壁ではなく、誰にでも適切な場所であろうシートに取り付けされています。新しいワイパーシステムは別のサプライヤーから調達していた以前の物に比べて遙かに良いリンケージを持っています。

[2009.11.25]