前社長、ピーター・ウィーラー

 タスカンの特徴は、まず最初に直6エンジンであることです。大排気量の直6は最近の流行ではありませんが、長いボンネットとエンジンを傾けるだけのスペースがあるので都合が良いのです。直6はパッケージ上の大きな優位点があり、車両レイアウト上V8では出来ない様々なオプションをもたらしてくれます。幅の狭いエンジンはドライバーとパッセンジャーの足元の空間を広げることが出来るので、ペダルレイアウトをより良くすることが出来ます。排気管を助手席の下側に通し、エンジンのそばに触媒を配置することが出来るので法規制に適合させやすいという利点もあります。排出ガス規制はどんどん厳しくなっているため、我々もそうせざるを得ません。V8エンジンの時はエンジンの前に触媒を配置したので、競技での優位性がかつてはありました。しかしローバー製ベースのエンジンで規制に適合させるのはどんどん難しくなっていくでしょう…。加えて、私はツインカムの直6の伝統が好きなのです。アストンやジャガーはイギリスの伝統です-私たちとは違う理由でそのレイアウトを使っているのですが。

Speed Six Engine

 センターバックボーンシャシーをやめることは考えませんでした。それはすばらしいアイデアで、最も重要であるセンター部分の強度や構造的な完全性を車に与えるものです。私はひどいクラッシュした後の、セダンをベースにしたコンバーチブルを何台も見ています。それらは大概真っ二つになっているか、二つに折れ曲がってしまっているので、安全だとは思えませんでした。センターバックボーンは、レーシングタスカンでは、あなたが想像するよりもたくさんの回数のクラッシュテストをしていて、いつも通用していたのです。世界でもっともクラッシュテストされたシャシーに違いありません…。

Rear suspension

 TVRの乗り心地はこの手の車にしては非常に良いと言う事実について、だれも正当に評価してはいないと思います。弊社は小さな会社にしては非常に多くの工数をダンパーに費やしています。現在、効果的に我々のブランド作りの出来る他の会社と共に作業しています。しかしタスカンについては、主な作業は軽量化することでした。TVR車は実際に重くはありませんが、デザインや製造と言った全ての段階で重量を削ることに焦点を置きました。それが出来れば、TVRにとって不可欠なハンドリングと性能の両方に貢献するだけでなく、同時に柔らかいスプリングをダンパーでコントロールすることが出来るのです。それは、乗り心地をさらに向上させるでしょう。

 TVRの別の重要な要素はスタイリングです。通常、私たちのスタイリングのスタートポイントはエンジニアリングで規定されます。それは機能美と言うものでしょうが、そのフレーズは他の誰かが使っていたと思います。たとえば、直6は長くて幅の狭いふくらみのあるボンネットを必要とするので、それをスタイルの特徴にしました。初めは、冷却の空気を排気するような通気穴にしてみましたが、あまり良さそうではありませんでした。次に、メインのエンジンカバーを固定し、前側を開けるという発想が浮かびました。アウディが似たようなことをしていたと思います。排気穴はボンネットの大きなくぼみとなり、熱せられた空気を排出するための穴を作らないで済んだのです。

Air Outlet

 信じられないかもしれませんが、我々はシンプルであることも守りました。車の側面を見ると、ホイール周りにはブリスターやスエージはありません。出来るだけ直線を保っていて、もっとも幅広の部分は座席の辺りです。それが最も大きいクラッシャブルエリアをもたらします。採用すると決めた形状は他の多くのものとは違っていて、流行を追ったものではありません。それはバンパーの時のようです。私たちがグリフィスでバンパーのないデザインを一番最初に行い、今では皆がそうしています。また、私たちはシャットラインを事実上無くしました。それは人々が最後に見つけようとする場所ですが、それが側面ではなく、車の上面に沿っていることがわかるでしょう。シャットラインを描くと、線画のように車の形を得られます。いままでこのようにしたことはありませんでしたが、良い理由があります。こうすることで、ボンネットとトランクの開口部を大きくできるのです。エンジンとミッションを上側から取り出せるので、サーブラウのように下側から取り出すよりも簡単です。タスカンはコンバーチブルではなくてタルガにしたのは、ルーフとリアウインドウを取り外してトランクに水平に収めてもなお荷物のための空間が残るということを確信していたからであり、そのようになりました。

TVR Tuscan Exterior

 金属の車体を作る設備にかかる費用は、我々の生産台数では見合わないという事実は置いておいても、それらの素材はあまりにも制約が多いのです。鉄では成型できない形状も、複合材料なら作ることが出来ます。現代のどの車を見ても、鉄の大部分は比較的直線になっています。もしきつい曲面ならば、プラスチックで出来ています。複合材料は我々のスタイルに合った形状を作れるし、さらなる利点として、カーブしているほど構造的に補強されるので強度が増すのです。複合材料は多目的の制作材料であり、進化し続けています。我々自身の変化としては、タスカンのボディには新しいハニカム構造を用いています。強くて軽い構造です。全体に対してかなり高いパーセンテージとなる約30kgを削減しました。

 期待されているちょっとした触感は失わなないで、内装をシンプルにしようと試みました。内装には以前よりも少ない数のボタンしかありませんが、ヒーターとパワーウインドウのダイアル以外の車の操作に必要とされる全ての機能が目の高さにあります。それらを探すために、道路から目を離す必要はありません。ドアは以前よりも大きく開くようになりましたし、シルを低くしたので車に乗り込みやすく、もっと重要なことには降りやすくなりました。シートについても同様に時間を費やしました。シートベルトはコックピットの後部ではなくシートに取り付けられているので、後ろに下がらなくても手が届きますし、引き出すときに絡まったりしません。座面のクッションは取り外せるようになっていて、2,3インチ着座位置を下げることが出来ます。我々の顧客はサーキットへ行くことが好きですし、屋根を取り付けた状態でヘルメットをかぶってシートに座るのは悩みの種の一つです。車高の低い車にシートのハイトアジャスターは付けられないので、これは簡単な解決策でしょう。メータークラスターは調節可能なステアリングコラムと一緒に動くので、どの位置にステアリングを動かしても計器板を見ることが出来ます。

TVR Tuscan Interior

 今では、フロントのロールケージと同様にリアのロールケージがあるべきだと考えています。最初のハードトップであり、超高性能のTVRの新しいラインナップの最初の車であるサーブラウから始めた安全機能です。奇妙に思えるかもしれませんが、恐れたのは転覆事故ではなく、車高の低い車が貨物自動車の後部に潜ってしまうといった類の事故です。しかし、コンバーチブルにリアロールケージを付けることは難しいので、タスカンは適切なロールケージを内蔵できるタルガトップにしたのです。また、リアロールケージはドアビームをかけるのに役立つ位置にあります。全体の保護ケージを形成するために、ドアのフレームを接合することができます。ねじり剛性と言うよりもむしろ安全のためですが、前部には長いアルミのチューブがダッシュを通っています。

 ハンドリングと乗り心地の両立は簡単なことではありません。いわば大きな妥協なのです。どの部分よりも大きい妥協です。車を速くすることは出来ますが、乗り心地は完全に犠牲になります。乗り心地を無視すれば、ドイツ車のハンドリングにすることは簡単です。先に述べたように、我々は軽量化してバネを柔らかくし、ダンパーでコントロールしています。誰かがどれだけ妥協するかを決めなくてはなりません。決定に関する助言は歓迎しますが、決断権は私が持っています。

 タスカンはこれまでとは違った方法で速い車であるでしょう。エンジン特性からは、最速の0-60mphを記録することは出来ないでしょうが、A地点からB地点へ行くため、もしくはサーキットをラップするのに最速な車となるでしょう。洗練と言ったことに戻ります。グリフィス500ではキーを回した瞬間、田舎道で攻め立てるようにと車に誘われます。タスカンはさらに優れた性能であることを望みますが、高性能を毎日使うことを期待していません。望めば引き出す性能はあるという満足感を持って、毎日車を運転して欲しいです。高性能とは顧客を幸せにするためにあるのです…。

 エンジンの特性については、単に洗練されたというより明確な考慮と言えるでしょう。グリフィスや他のV8エンジン車には、どっしりした低回転のパンチがあります。使い方を知らなくては濡れた路面で問題を起こすでしょう。直6のパワーについては、もっと回転数に関連するようにしたかったのです。つまり、回転数が上がるにつれさらにパワフルになるのです。低回転のパワーをもっと増やすことは出来るのですが、ハンドリングしやすく御しやすい特性に保つことにしました。また、エンジンは良いレスポンスを持っているべきです。最近のエンジンの大部分は、ペダルを踏み込んだときの応答がとても悪くて苦痛です。我々のエンジンには、高価なツインプレートクラッチを必要ですがとても小さいフライホイールを装着しているので、エンジンはすぐに応答しますし、エンジンマネージメントは大変賢いものを使っています。ジョンは吸排気管の長さと排気カムシャフトや電気系とのマッチングにに多くの時間を費やしました。複雑な可変吸気管や可変カムタイミングなしでこの特性が成し遂げられているのは、驚くべき事です。

Speed Six Engine

 どんな車も中心はエンジンです。 すばらしい車の中心にはすばらしいエンジンがあります。フェラーリやアストンがどこか他社のエンジンだったらと想像してみてください。同じように速く走れるかもしれませんが、既に本物ではなくなってしまいます。スポーツカーのエンスージアスト達が知っているように、スピードのみが唯一の理由ではないのです。エンジンの出力特性、レスポンス、音といったものが性能と同じように重要なのです。機械の作動で喜びを与えるようにデザインされた車に不可欠な成分です。そして、TVRに自社製のエンジンを作るように導いたのは、これらの成分をTVRのものとする必要があったからです。それだけではなく、違うモデルに適した特定のエンジンをを作るためでもあります。小さな会社にとって大きな仕事ですが、TVRの将来には不可欠なものです。エンジンの性能と同じように特性をコントロールすることで、TVRは良いスポーツカーをユニークな何かに変化させる特別な特質をそれぞれのモデルに授ける事が出来ました。エンジンにTVRの印を付けることが出来たことは、それが本物であるこを知らしめるものです。

Speed Six Head

6つの大きなシリンダーが一列に車に沿って並び、一組のオーバーヘッドカムシャフトがチェーンで駆動されているタスカンのスピードシックスエンジンは、かつてイギリスのスポーツカーで伝統的であったレイアウトに回帰しています。最新の素材と電子技術の利益を伴う、伝統への回帰です。TVRのエンジンデザインと開発チーフのジョン・レーベンスクロフトは最近の会社のすべてのエンジン開発を監督しました–サーブラウとタスカンのレースカーに積まれているAJP V8も含まれています。

[2009.11.11]