サスペンションブッシュ交換

フロントロアアーム・リア側

 フロントのロアアームのリア側のブッシュをPERRIN PERFORMANCEのLancer Evolution P.S.R.S.に交換します。 P.S.R.S は Positive Steering Response System の略で、ゴムブッシュの部分を完全にリジッドにしてしまうことで、サスペンションのコンプライアンスによるアライメント変化を抑制するものです。

ロアアーム取り外し

 ロアアームはヘッドライトのレベライザー用の車高センサーアーム(右側のみ)、スタビライザーブラケット、ロアボールジョイントのボルト、サスペンションメンバー側の2本のボルトを外せば取り外せます。この時、アクセルハブを全体に前の方に動かしてやると取り外しやすいです(動かしすぎには要注意)。また、右側リアのナットは車高センサーが邪魔で上からメガネをかけるのは困難なので、しっかりしたスパナが使えると便利です。

 ロアアームを取り外したら、ブッシュを油圧プレスで抜きます。治具に岩田製作所製 スタンダードセットカラー 無電解ニッケルメッキ 品番:SC4522Mを使いました。外径75mmでちょうど良いサイズでした。下の写真の右下のものです。

ロアアームリアブッシュ抜き取り

 P.S.R.Sにはオフセットの有り無しで2タイプあり、オフセットありの方はキャスターを1.5度増やすことが出来ます。私はオフセットなしを選びましたので取り付ける角度は関係ないのですが、オフセットありの方は前側ブッシュの軸線とP.S.R.Sに描かれている前後方向を合わせる必要があります。加えて、オフセットありの場合は、サスペンションメンバーと干渉するので、その部分を切除しなくてはならず、メンバーの強度が低下するのであまりお勧めできないです。

 車体への取り付け時には、ピロの上下にカラーを挟みます。このカラーは短いものと長いものの2つを組み合わせますが、下側に短いものを使うとノーマルと同じになり、長いものにするとリア側のサスペンション取り付け位置が上がるため、アンチダイブ、アンチリフトの角度が増加して、それらの力を増加させることが出来ます。私は下側に長いカラーを入れることにしました。

カラーを挟んだ取り付け状態

 カラーにはグリスを塗ってピロから落ちないようにしておくと取り付けが楽です。ボルトの締め付けトルクは、サスメン側の前後2本は110Nm、ロアボールジョイントは71Nm、スタビライザーブラケットは39Nmです。

 取り付け後に試走しに行ったところ、直進からの切り出しが自然になりました。ノーマルで感じていた、「ものすごく曲がるんだけどなんだか無理に曲がらされている感じ」がなくなり、ステアリングとの一体感が増しました。また、ブレーキをかけた瞬間にフロントに荷重が乗っている感覚が増えました。また、ブレーキング時の操舵応答もしっかりして、とても乗りやすくなりました。背反として、路面が荒れているところでは微振動がかなり伝達されてくるようになりましたが、乗り心地から操縦安定性に性能を振り分けた結果なので当然です。何より、何となく感じていたランエボXの違和感が低減したことが最大の収穫であり、気持ちよく曲がっていける車になりました。

[2012.6.10]

フロントロールセンターアジャスター(ロアボールジョイント、タイロッドエンド)

ロールセンターアジャスター取り付け状態

 車高を下げていることによりサスペンションのアライメントは変化し、一般的にストラットサスペンションの場合はロールセンター高は車高を下げると下がってきます。ロールセンター高は旋回時の左右輪の荷重移動量の前後の配分に影響を与えます。

 ロールセンターアジャスターの構成はロアボールジョイントを長いものに交換します。これにより、サスペンションのジョイント部分の位置を相対的に下げることになるので、下側のサスペンションの回転中心へ向かう角度がもとの傾きに対して高くなり、その結果として車高を下げることで下がってしまったロールセンター高を少しでも戻す方向にすることが出来ます。

 ロアボールジョイントだけを長くしてしまうと、サスペンションがストロークした時にトー変化が大きくなってしまいます。それは、タイロッドとロアアームが動くときの相対角度が変わってしまうことによって発生しますので、タイロッドエンドの方も長いものに交換して、軌跡をあまり変えないようにします。

ボールジョイント取り外し用治具

 ロアボールジョイントの交換はロアアームを外して、ダストシール、Cリングを取り外し、油圧プレスで抜きます。治具として、岩田製作所 スタンダードセットカラー 無電解ニッケルメッキのSC2015M(内径20mm,外径32mm)とSC5025M(内径50mm,外径79mm)、ベンカン・ジャパン 溶接式管継手(黒)同心レジューサの呼び径(A):25×20のものを中央部分で切断して太い方の内径を20mmに拡大加工したSSTと、ダストカバーの打ち込みように同じ同心レジューサの呼び径(A):40×32のものの太い方の内径をダストカバーに合わせて拡大加工したSSTを作って使用しました。

 ロールセンターアジャスターはWHITELINE KCA395 Roll center – correction assemblyを入手しました。ノーマルと比べてみると見た目にはあまり長くなっているようにはみえませんが、ボールジョイントが少しオフセットしてアームの下側にずれていることがわかります。

ロアボールジョイントの比較(左:ロールセンターアジャスター、右:ノーマル)

 新しいものを打ち込んで、スナップリングを取り付けてからダストカバーを打ち込みます。車体にロアアームを取り付けたら、タイロッドエンドも交換します。

 タイロッドエンド用のボールジョイントセパレーターを使って外します。このとき、ボールジョイントのナットは短めに緩めて(ボルト部分から出ない程度まで)おきます。セパレータの爪をダストカバーの上に差し込み、腕のほうはボルトの上部にかけて、セパレータのネジを徐々に締めこんでいくと外れます。写真の紐は落下防止のためのものです。

タイロッドエンド取り外し(ボールジョイントセパレーター)

 ここさえ外れてしまえば、あとはタイロッドエンドを取り外して交換するだけです。ボールジョイントのナットの締め付けトルクは40Nmです。ノーマルと比較するとボールジョイントの位置が低くオフセットされています。また、ボルト部分の径が細くて短くなっています。

タイロッドエンドの比較(左:ロールセンターアジャスター、右:ノーマル)

 タイロッドの長さは交換前と同じにし、車高調も交換前と同じ状態としたところ、キャンバーが約1度程度増加しました。アライメント調整していない状態で軽く試走したところ、ボールジョイントの摩擦が増えて、切り始めから摩擦感があり、それによって切り始めの応答がとてもスローに感じるようになりました。素早く切ってみると、ボディのロールよりも、旋回外側のタイヤの外側のサイドウオールのたわみが気になる感じです。バネ上の動きはがっちり抑えられてます。

[2012.6.17]