エボXサスペンションチューン

 ノーマルサスは乗り心地重視なバネレートで、KYB製のダンパーは初期はフリクションが大きく、それが馴染んで取れてくるとダンパースピードが低いところの減衰力が不足しています。

ノーマルダンパー(前用)

 サーキットユースでは挙動変化が大きく、純正タイヤの低いグリップ力であればなんとかバランスが取れていますが、ハイグリップ系のスポーツタイヤでも対応するのは難しそうです。

 メーカーオプションのハイパフォーマンスパッケージを選択するとスプリングはアイバッハになり、ダンパーはビルシュタインになりますが、新型車解説書スプリングの仕様を見ると、線径が14mm→15mmで約7%(平均径の範囲も広くなっているので大体の値)固められますが、その程度では不足と思えます。

 また、表を見ていて気が付きましたが、フロントのバネレートはGSRとRSで同じ、リアはRSの方がバネレートが高いです。GSRの方が100kgほど重いので、相対的にGSRはRSよりマイルドなセッティングです。

 下にノーマルサス(ハイパフォーマンスパッケージ)のデータを載せておきます。

コイルスプリングフロントリア
線径15mm11mm
平均径120mm~160mm79mm~87mm
自由長287mm(5M/T)/292mm(SST)343mm
ばね定数37.3N/mm(3.8kgf/mm)29~36.3N/mm(3.0~3.7kgf/mm)
ダンパーフロントリア
最大長494mm579mm
最縮長342mm465mm
減衰力
(0.26m/s時)
伸び2705N(275.8kgf)
縮み465N(47.4kgf)
伸び705N(71.8kgf)
縮み340N(34.6kgf)
スタビライザフロントリア
線径25mm23mm

 フロントサスペンションはストラットのため、キャンバー調整が出来ません(ストラット固定ボルトを変えて調整は出来ますが、微調整するにはボルトをたくさん用意する必要があります。アッパーマウントを調整式に変えればもちろん変更可能です)。メーカー指定のキャンバーはフロント・リア共に1deg狙いですが、サーキット走行ではもう少しつけておきたいところです。

 そこで、車高調整式サスペンションを導入します。最近は全長調整式が普通になっているので、バネの選択の自由度が高いのは良いです。その分、バネ下重量が増加する可能性があるということも考慮しておきたいところです。

K-SPORT Racing 車高調

装着編

 定番の?OHLINSやアラゴスタ等に行ってしまうのは簡単なので、ちょっと変わったメーカーを選んでみました。K-SPORT Racingの車高調整式サスペンションです。特徴はシェルケースがジュラルミン製で軽量(F:4.8kg, R:3.8kg バネ含む)ということと、ダンパーが36段調整と言うことです。もちろん、フロントのアッパーマウントはピロボールでキャンバー調整機能があります。残念なのはスプリングのID(内径)が62ということです。ID 60だったら手持ちのバネ達が使えるのですが。

 車高調はボルトオンというのが普通だと思いますが、K-SPORT Racingのものはボルトオンではありません。リアはボルトオンですが、フロントのシェルケースに、ブレーキ配管ブラケットの固定ボルトが無いので、付属の汎用っぽいステーを使って、自分で考えて固定しなければならないのです(説明書にはどのように付けるかの説明はありません)。私は下の写真のように固定しました。

ブレーキ配管ステー加工

 ストラット下部の固定ボルトと汎用ステーを共締めにし、ストラット後方を回してつつひねりを加えて斜め上方に持って行き、付属のゴムブッシュを介してブレーキ配管ブラケットをボルトで留めました。なかなか上手く取り付けることが出来たと思います。

 その他は難しいところはありませんが、リアのストラットタワー上部は補強されていて調整用のダイアルを後から差し込むことは出来ないので、サスを装着する時にダイアルを差し込んだ状態にしておかないと後で調整するのが困難です。さらに、調整する為ストラット上部にアクセスしようとすると、トランク前側のプラスチックの隔壁を外す必要があるのです。この点、OHLINSは調整ダイアルが延長式なので便利です。

 車高の調整の基準値は説明書には記述されていないので、とりあえず現物あわせで調整しました。シェルケース(ロアマウント)固定リングの上端と、スプリングシートの下側固定リングの下側までの間隔で、フロントは10cm、リアは15cmにしました。車高のセッティングはしていませんので、暫定で組み付ける時の参考値です。ノーマルに対して2cm位下がる感じです。

慣らし編

メーカー推奨のダンパー設定は中央(18段目)とのことですが、慣らしのため前後共に最弱側から3段目に設定して走ってみます。前後のダンピングのバランスが悪くて、高速道路の路面のウネリですらヒーブ方向が落ち着きません。前後の動きの差からフロントの減衰が不足していると判断できたので、フロントを5段目に変更、リアは3段目のままにしたところ、状態は改善してなかなか良い感じの前後バランスとなりました。装着したスポーツ仕様のバネレートはフロント8.7kg/mm、リア7.2kg/mmですが、乗り心地はノーマルのふわふわ感(スーパー筋金君+ノーマルサスによるもの)は少なくなり、ソフトな乗り心地が好みならこのセッティングで問題なさそうです。この状態でワインディングを軽く走ってみても、リアがちょっと下げすぎでネガキャンが大きめになったのが効いている感じの弱アンダーっぽくなって好みに合います。フロントの応答性をもう少しあげたいので、バネレートを12kg/mmに変更してみようと思い、バネを発注しました(12kg/mm, L=180mm, ID=62mm)。リアはそのままで行くか、フロントの8.7kg/mmを流用の予定です。

[2010.10.2]

バネレート変更(F:12kg/mm, R:7.2kg/mm)

 発注したバネが到着したので、早速交換しました。アッパー側の固定ナットは(ナイロンのロックナット)あまり緩めたくないので、ロア側(シェルケースとスプリングの固定リング)を外して交換しました。レートを上げたので少し車高を下げ、微妙に前下がりにしました。

 リアは変更無しの7.2kg/mmなので、前後のバランスとしてはちょっとリアの応答が低めです。初期応答に若干の位相差を感じますが乗りにくいほどではないので、まずはこの仕様でサーキットに行ってみることにします。

[2010.10.28]

バネレート再変更(F:12kg/mm, R:8.7kg/mm)

 サーキットへ行ってみましたが、バランスが崩れて非常に乗りにくい仕様になってしまいました。オーバーステアが気になっていたので、基本特性をアンダーステア方向に持っていったところ、AYCの制御で結局オーバーっぽい挙動は出てしまい、そこでカウンターを当てて戻していくと、基本特性のアンダーが出てしまうという訳の判らない状態でした。

 リアのサス特性でリアが落ち着かない感じになっていると考えられるので、リアも固めます(7.2kg/mm→8.7kg/mm)。後は、サスの特性変化が出にくいように車高を上げることにしました。1G状態でロアアームが水平近くになるようにしたほうが、ストロークによる影響は減ります。エボXのリアサスは、ロアアームとトーコントロールアームのボディ側の取り付け点が極端に違うように設定されているので、サスがストロークした時にトーが大きく変化してしまい、リアの落ち着きが無い感じのフィーリングになってると考えられます。

 キャンバー角については、1G時とリバウンド時のキャンバー角の差を見るとあまりキャンバーが変化していないので、イニシャルでキャンバー角を増やすことにしました。しかし、リアの調整幅があまりなかったため、リアのキャンバーは1.5degとしました。リアのトーインはノーマル基準値の3mmに対して、少しトーインを増やして4mmとしました。これは、キャンバーが思っていたほどつけられなかったので増やしました。

 フロントは、トーインはノーマル基準値の0mmにし、キャンバーは少し多くして2degとしました。リアとのバランスとタイヤの減り方をみて、少し増加させました。

 アライメント調整によって、N付近からの切り出しがスムーズになり、過敏なヨー応答が消えました。この仕様でサーキットに行ってみることにします。

[2010.11.20]

 筑波サーキットに遠征に行ったところ、ロールが大きくてタイヤを上手く使えない感じなので、バネレートを上げていく方向で際セッティングします。富士のショートコースは34秒00だったので、ミニサーキットなら十分なセッティングだと思います。

[2011.1.16]

バネレート再々変更(F:15kg/mm, R:12kg/mm)

 フロントに15kg/mm, 6inch長のバネ(RS☆R Ti2000ストレート)を入れました。リアはそれまでフロントに使っていた12kg/mmを入れました。かなりガチガチです。ダンパーの調整もほぼ最強まで締め込んでなんとかというレベルなので、これ以上は車高調自体を変えなくてはなりません。

 フロントはキャンバーを3degに増やしました。車高もフロントを下げ気味にして、車両全体は結構前傾にしました。

[2011.6.14]

【追記】RS☆R Ti2000ストレートのID62は、K-SPORTのスプリングシートと相性が悪く?、スプリング内径が小さいのかシートの径が大きくて干渉してしまいました。

K-SPORT車高調まとめ

セッティングの面ではバネを固めていきましたが、そうすると減衰が不足してしまい、なかなかいいところが見つかりませんでした。

 1年使ってみて、メッキ処理が悪くすぐに錆びるという品質面の問題と、全長調整部分のネジが普通の三角ネジ&左前ストラット用が逆ネジになっていないので緩みやすいという設計面の課題もあります。

以上から、このサスキットはあきらめて、ZEAL function X (F:14kg/mm, R:14kg/mm)に変更しました。

[2012.1.15]