エンジン設計開発

ジョン・レーベンスクロフト、エンジンの設計開発者

 スピードシックスはサーブラウに積んでいるAJP V8エンジンよりもスムースでなくてはなりませんでした。もしくは、さらにリファインされなくてはならないかもしれません。というのも、AJPが最近とても良くなっているのです。AJPは、カムに合わせた排気系や吸気系をチューニングするのに関しては簡単といえるフラットプレーンクランクを採用してます。それ故、V型に広がってはいるものの、2つの独立した4気筒エンジンのように扱えるのです。Vの角度が狭いブロックはパッケージングには良いのですが、洗練させるのは難しいのです。その点では直6の方が優れているのです。また、顧客にとって興味深いところになると思われる点として、組み立てやメンテナンスもしやすいです。

Engine -Rear side-

 バランスやチューニングの面から言えばV8に似ていて、そこはTVRに不可欠な部分ですが、いったん直6で行くと決めてからは、多くのアドバンテージがあることが解りました。一番に、仕事が簡単になりました。触媒が素早く暖まるように、エンジンのそばに配置することが出来ました…排気ガスの試験に合格するには最初が肝心です。触媒が60秒でなく30秒で暖まることに、試験に受かるか落ちるかがかかっています。大きな6気筒エンジンを傾けて搭載することに決めたので、触媒をブロックの下に隠して、ボンネットの中を熱から守ることが出来ました。また、各660ccの大きなシリンダーは体積効率を良くすることが出来ます。1気筒に4バルブが必要になりますが。

 スピードシックスの場合、パワーは充分出るので、むしろどのように出るかが大切です。必ずしもそうではないのですが、直6は低回転でパンチがないと言われています。パワーカーブのその領域を埋めるのは確かに難しいので、低回転はそのままにして中回転域を埋め、そのまま高回転まで維持するようにしたのです。特にグリフィスとキミーラのローバーベースの5リッターV8は、低回転では濡れた路面ではちょっと危ないほど有り余るトルクがあるかもしれません。そのエンジンと出力曲線を比べると、スピードシックスは3000rpmでは少し小さいですが、3500から5000ではほとんど同じです。5500からはもっとパワーが出ていて、V8よりも1000回転も高い7000rpmまで続きます。スピードシックスに中回転から上でV8と同じようになるように仕立てましたが、その特性は新しい車に合っていると思います。

 スピードシックスは長くて幅が狭く、比較的背の高いエンジンなので、望むにしてもそうでなくても、傾けなくてはなりませんでした。それにより、シリンダーヘッドからのオイルの排出および長いサンプの中でオイルサージが起きるのを止める為の特別な手はずが必要です。最近のタイヤはとても高いGを発生できるので、我々は顧客に余計な心配を掛けずにサーキットへ行って遊んでもらうことを望んでいます。それはより高価ですが、心の平穏が得られるのでその価値があると考えています。

 クランクシャフトには鉄よりも内部減衰が優れた特殊鋼を用いています。外部のクランクダンパーなしでも、ダンパー付きの鉄製クランクよりも共振を抑えます。同様に、優れた振動特性を持っている小型フライホイールを使っています。それはスロットルレスポンスも助けますが、芳しくないのは、小さい直径でも強度を得るために高価なツインプレートクラッチを使わなくてはならないことです。

 またスピードシックスではレース用の鍛造ピストンを採用しています。ピストンは軽くて良い品質の低膨張率の合金で、鋳造のものには高グレードのアルミを使っています。これまでは、大企業のようにそれらのような素材をこれほど多く使ってはいませんので、大変努力したのです。収益性にはあまり良くはありませんが、顧客にとっては良いことです。

Six separate butterflies

 このように、いくつかの場合ではレースの手法を使うことが、我々の望む特性を得る唯一の方法でした。6連スロットルや電子制御の方法などもそうです。それらもまた高価なものですが、パワーが欲しければそうしなくてはならないのです。何故なら、もし全ての吸気管をまとめて一つのスロットルにした場合、一つのシリンダーからの吸気脈動が全ての他の吸気管に影響を及ぼしてしまうのです。吸気管を独立にすることで、低速の洗練を失わずにもっとアグレッシブなカムシャフトを使うことが出来るのです。そのことは、スロットル開度による電子制御を使う必要があることを意味します。多くの大量生産のエンジンは、エンジンに入っていく空気の総量を単純に計測するエアフロメーターを使い、その値を必要総燃料に関連づけています。その方式は安くて補正が簡単ですが、エアフロメーターはエンジンから離れているので空気が移動するのには時間がかかります。そのため、スロットルレスポンスが犠牲になるのです。我々にはそれは許容できませんでした。

 排気ガス規制は、大量の燃料をいつでも入れる訳にはいかないと言う点で、活発なエンジンにしたいときには最も悪いものです。しかし、電子制御に一生懸命取り組む事で熟成させました。自己学習システムを使った最初のほうの一人だと思います。多くのエンジン制御は、排気システムから少し後方にあるラムダセンサの情報に頼っています。システムは、センサーがエンジンで何が起こったかを出力するまで待ち、そして調整します。我々のものは基本マップから開始して、混合気の現在の状態を監視してマップを補正し、更に状態をチェックします。全ての回転数と負荷において正しい混合比になるようにマップが補正されます。空燃比を調整する為に既に起こってしまったことを追いかけないで、過去に何が起こったかを記憶しているのです。レスポンスの面ではより良いのですが、補正するのは難しくて、しかも高価です。

 カムシャフトのフィンガーフォロワーは軽いのでバルブ装置のイナーシャを減らすことが出来るのと同時に、保守もしやすくなっています。チェーンと減速スプロケットはカムを駆動しています。高価ですがエンジンの寿命まで持ちますし、減速スプロケットは前からのエンジンの見た目が良くてスリムです。

Muffler

 バイクのようなマフラーについてファッション性以外のことで言えば、実用上の利点は床下で熱を放出している2つの大きな箱をなくせることです。バイク用だと更に軽いのと、見た目が変わっています。もし、これを他から買ってくると高いでしょう。実際は弊社の工場で製造しています。TVR車で使っている他の多くのもののように数が少なすぎるので、適正な価格で欲しくても買うことができないのです。独自のものにしたければ、自分でするしかないでしょう。